年明け後の本格的な寒波も北陸の平野部にはさほどのこともなく、大寒らしからぬ穏やかな装いの中、どんぐりちゃん、うめももさんの発表会がありました。
初めての2階席から・・・
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メインはもちろん年少であるうめももさん。当日の「やぎとトロル」は、谷川の流れる山間部で暮らすヤギたちが緑生い茂る新たな天地を目指して橋を渡っていくとその谷間に住むトロルたちが行く手を阻む‥‥という有名な「3びきのやぎのがらがらどん」を下地にしています。とはいえ絵本のストーリーを忠実に再現する劇ではなく、絵本のお話は借景。うめももさんの「おはなし」では、トロルは大きながらがらどんに八つ裂きにされることもなく、やぎも新天地にたどり着いたわけでもない、隠れては見つけ、逃げては隠れて…の繰り返しの双方の駆け引きが延々と続くことを楽しむ…そんなところがうめももさんの「おはなし」の肝。一晩寝てから翌朝再び起きて…という繰り返しが3回(3晩)くらいあったのが、本番数日前のリハでした…(笑)。
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取り組みでもホールや2階に遊具庫等々、隠れ場所を見つけ、そしてそんな隠れた相手を見つけて捕まえる、そこから逃げてまた隠れる、ヤギとトロルのこうした駆け引きが楽しい…ということで、それを当日仕様の舞台の構成に仕立てる過程で当初の「1本橋」から徐々に大がかりかつ複雑に・・・。大型積み木だけからベンチや平均台など園にある色々なモノを吊り橋が増えることで、ヤギ役はどこを渡ってどう行くか?(ヤギとして)、トロル役はどこで隠れてどう待ち伏せるか?それぞれの子どもたちの想いの中で、どう行動するか?選択肢の幅も広がり、子どもの裁量でその場その場で決めていきます。斜めや凸凹の橋を渡っていく動き方もヤギならでは、その隠れ具合も「山間部」の構成が日々変わる中で隠れ場所も新たな空間を見出したり、そんな子に触発されて次にはその場所に一緒に潜りこんだり・‥。この「おはなし」の展開としてうめももの色々な子の姿を捉えてもらうには、上から俯瞰して見てもらうのが一番いいのでは…と今回、初めてお家の方々は二階席へ…となりました。
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お客さんはいっぱいいるけど自分のパパ、ママを意識せずに、これまで通り遊んできたヤギ、トロルとして演じられる、うめももさんにとってはこの距離感もよかったように思いました。近くで見るのとは違う子どもたちの世界を天上から俯瞰できたのではないでしょうか(近さの臨場感はまつくり、さくらあんずの子どもたちがお客さんとして体験。子どもって自分が隠れてる、見つけている「我が事」感覚になりやすいので)。若干惜しむらくは二階からの死角になっているエリアでの姿は見づらいのが残念だったかも・・・。(例えば踊り場から草を食べつつ階段からヤギが下りて橋に乗るところまで・・・とか。ホントにキレイに草を食べ尽くして…という風情は近くで見て、おお~ヤギの群れ、と実感できます…笑)
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演じ手としてヤギとトロルですが、他にもお話の重要な役割を、音響や照明など場面展開の係さんも担ってくれました。(中には夜の星でもあり歌の指揮役も…笑)どういう役回りでこの「おはなし」に自分が主体的にコミットするか?取り組みの中で子どもたちがそれぞれ自分で「役割」を見出して取っていたところも見逃せないところです。ヤギとトロルもどっちにも成り代わる子もいて、いわゆる主役なるものがない、というか、誰もが主役の「おはなし」として作ってきたのが担任の腐心したポイントでもあり、それぞれの個性を活かすうめももさんのクラス作りの肝でもあり、それを集約したのが今回の発表会でした(発表会等の個々の姿、役割などはまた個人面談等で担任より伺ってくださいませ)。
環境を遊びこなす・・・
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そんなうめももさんのホール全面の舞台構成への「とばっちり」を受けたどんぐりちゃん(笑)。もとい、「とばっちり」ではなく「恩恵」ですね。日々のうめももさんの取り組みを間近に感じながら、うめももさんがする舞台設定を「借りながら」毎日色んなことを楽しんできたどんぐりちゃん。数日前のリハではまだホールに余白のある領域を中心にボール転がしの遊びでしたが、徐々にホール全面「迷路」状態の中となり、その狭い「通路」を走り回るレースごっこに挑戦。こんなところを走って通れるの・‥?という「道路」をそれぞれ見出していたどんぐりレース隊、オープニングをしっかり飾ってくれました。もっと当日は固まってしまう子が多いのではと思いきや、どんぐりの部屋から今か今かと待ちわびていた様子の子ども達。お家の人との距離感で言えば、どんぐりちゃんにもパパ、ママを意識せず普段通りの遊びを演じられたのではないでしょうか。
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特にどんぐりちゃんは発表会の「は」の字も出さずに、取り組みらしい取り組みの「お仕事」もなく、当日のこれまた新たな環境の中で普段通りに遊ぶ‥‥。それがねらいの主眼でしたので、担任は日々変わる舞台構成にどうしよう?と悩みつつも、そこにある環境をどう活かして遊べるか?子どもたちの動きに委ねて任せてきたところは、今年一年どんぐりのお部屋を安心してかつ遊び込めるように環
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境構成を変化させて、そこにしっかり溶け込み、遊びをより深めてきたどんぐりちゃんたちならではの力を信じた担任の想いも強くあるかと思います。また12月の年中発表会の取り組みからこうした発表会絡みの舞台構成の「残りもの」を使って真っ先に遊ぶのも日常であったどんぐりちゃん(お昼を食べて一番にホールに出てくるのはどんぐりちゃんなので)。そうした以上児たちの「おすそ分け」の「恩恵」をいっぱい味わっている「お得感」を満喫してきたのもどんぐりちゃんだったことも、環境を遊びに活かす力をこうした「発表会」の場でも発揮できたところからもしれません(本園に2歳児の拠点を置いた大いなる効果の一つ・・・)。
子どもから子どもへ、そして親から親へ・・・
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そして発表会の最後はお家の人たちは、「うめももピタゴラスイッチ~どんぐりさんとご一緒SP」でした。子どもたちにも人気の某TV局のピタゴラのうめももお家の方々バージョンはそれはホントに見事なものでした。ピアノ演奏から生歌、パントマイム、それぞれのこだわりどころの妙味、うめももさんの好きな「キノコ」をモチーフにしつつ、何より素敵に思えたのは、どんぐりのお家の方を無理なく溶け込むような入れ方で構成されていたこと(おやじたちの出番も用意しつつ・‥)。昨年度まではプチちゃんのお家の方が年少と2歳児(当時はぐみ)のお家の人同士をつなぐ役でしたが、どんぐり組ができたことで、年少さんの親とどう繋いでいくのか?園としても大きな課題でした。
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その中で夏の幼稚園の教研大会でどんぐり担任(りえ先生)が発表した木の花の保育の「見える化」事例の延長戦として、今年新たな取り組みを加えたのがどんぐり組の平日連続ビデオトーク。そこに年少さんと絡む場面を加えた、どんぐり&年少さんのビデオトークも2回ほど加えました(1回は開催時間帯を遅めに)。年少さんとどんぐりの親御さん同士の出会いの場を設ける中で、発表会って…の感覚を親から親に伝わっていって欲しい…という想いが担任の根底にあり、課題はありますが(駐車場問題、預かり保育の体制等々)、平日ビデオトークを異学年で重ねてやってきたこともどんぐりのお家の方々を繋ぐ背景の一つかも、と思うところです。見る側から演じる側に立った時のドキドキ感と共に「やった」喜びや充足感も味わってもらえると、それは子どもの心持ちと重なって当日の想いも共感できます。どんぐりのお家の方にとっての次の舞台(来年の年少に向けて)への序章になれば、と願っています。
これまでの蓄積を力に代えて・・・
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そして子どもたちのトリを務めるのはまつくりさん。次に控える年長発表会の劇のちょこっと宣伝パフォーマンスでの本編ご紹介です。年長さんになるとこれまでの経験をしっかり記憶して、発表会に向けて自分たちが何をしたいのか?より明確な共通目標に向けたゴールイメージをクラス全体で作っていく…そのこと自体を楽しめると共に、色々な表現方法を自分たちでよりリアルに考えることを楽しむようになります。今回はその取り組み途上の一端を紹介してくれました。俺たちの劇も楽しみにね…という、うめももちゃんたちへのエールだと思います。
発表会は当日の舞台だけの姿だけでなく、それまでの取り組み、そしてその後(アフター)の姿も含めて・・・という連続性の中にあります。日常の中の遊びを土台にその時の子どもたちのカラーを照らしながらテーマに据え、取り組み自体に色々な学びを得ていますが、当日の舞台で自分の表現(借り物ではない)を見出し、人前を「くぐる」ことで得る自信、共に「くぐる」仲間意識を糧に、それぞれの子どもたちは一つ脱皮を遂げ、大きな壁を一つ越えていったうめももさん(気づいていないけどどんぐりちゃんも)。同じ空気感を共有して舞台を創ってくださる大人たちの眼差しが演じ手の子ども達を支えている、と今回も改めて感じ、二階から(異学年のお家の方は少し遠い階段席でしたが)温かく見守ってくださったお家の皆さんにも改めて感謝です。有難うございました。
次はいよいよ子どもたちのオオトリ、まつくりさんです。これまた一年の取り組んできた「りゅう」の新たな物語。発表会の醍醐味を存分に下の学年の子らに響かせるような、幼稚園時代の集大成として新たな春の到来を呼び込むような舞台を心待ちしたい、と思います。
あゆどん(記)
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